チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち/遠藤誉
- 作者: 遠藤誉
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/03/16
- メディア: 単行本
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これほどスリリングな中国政治の追跡書があっただろうか?中国の権力中枢__チャイナ・ナイン。
その9人をめぐる、あまりに人間臭く、あまりに壮大な実録ドラマ。中国政府のシンクタンクである中国社会科学院の客員教授を歴任し、
今なお政府高官との太いパイフを持つ遠藤氏が、
大国の「現在進行中」の社会と政治の真相を、政権中枢の奥深く、
さらにその奥まで切り込んで描いた完全ノンフィクション。中国の中枢とつながりを持つ著者が、ここまで記していのか?
中国との関係において、筆者が命を賭して書き上げた一冊。本書を紐解けば、中国の全貌がわかります。
(アマゾンより)
中国の現代政治についても著者についても殆ど知らない状態で読んだのだが、とても面白かった。
中国共産党は、現在、世界最大の組織(構成員8,000万人)である。そのトップ9名が、中国共産党政治局常務委員 。会社でいえば取締役、というところか。
この9名には序列があるが、多数決で物事を決める。だから人数が奇数になっている。毛沢東時代は個人独裁だったわけだが、今は、合議の時代となっている。
また、この9名には「5年に一回の改選」「2期まで」「改選時68歳になる人は引退」という鉄のルールがある。一方で、9名は選挙で選ばれるわけではなく、前任者や長老たち、派閥バランスの合議で決まる。(・・・・なんだか全体的に、日本の大企業でもこういうところ多そう) 現役の国家主席と前の国家主席の微妙な権力バランスも、社長と会長で人事を巡ってやりあう日本企業に近いな…と思いながら読んだ。
この9名に「チャイナ・ナイン」というキャッチフレーズをつけたとことが本書の面白さだし、それゆえに「この9人が動かしている」というクローズアップバイアスはあるのかもしれないが、それを割り引いても、すごいく面白い。
「社会主義で中国を分裂させずに発展させる」という強い意志を持っている中国共産党トップ層の「敵」は、むしろ自国の大衆、特に、自国のネットユーザーである、
とか、
10年後、20年後を見据えた人事権力闘争
とか
非常に興味深く面白い内容が多い。
経営学の世界では三品和広先生が「経営は10年」という本を出して長期的戦略の重要性を説いていらっしゃるが、中国の政治は実際にこれが実現されている(5年に1度の改選)ことになる。一方で、日本の政治とか企業とか、民主的なのは誇りかもしれないが、短命政権が続きすぎる。これでは競争には勝てない・・・と思う。いやでも、日本は政治家はコロコロ変わっても実質的にはトップ官僚の皆さんが10年の計でやってるからいいのか・・などと、読みながら思考は戦略と組織に膨らむ。そういう意味でもすごく勉強になる材料だった。
さらに、著者の壮絶な個人史が語られる最終章が凄まじすぎる。「私は国共内戦を経験している」と序盤にもおっしゃっていたが、これだけで一冊本になるくらいの凄まじさであり、日本人であれば読むべき内容。(実際に、著者はこれらを書籍として発表されている。不明にも知らなかった)
個人的な余談。読後、ネットで見ていたら、著者が女性であると知って、ビックリ。本を読む限り全く感じなかったので。