ホイホイ記憶術/多湖輝

 

ホイホイ記憶術

ホイホイ記憶術

 

 

昭和51年の本が復刊!Kindleで100円!!という情報を知り、今、ちょっと暗記モノに取り組んでいることもあり、迷わず購入。

 

多湖輝さんといえば、自分が小学生のころ「頭の体操」という本で名前を見たかな、くらいの記憶しない) 

 

読んでみて、復刊されるだけはある非常な名著だと思った。個々の記載内容は、記憶術としては良く言われることも多く、自分でも既に実践していたことも含まれるが、改めてこうして一纏めにして読めて非常に良かったし、勇気づけられた。

 

今は、「記憶はネットやデジタルに任せればいい」と喧伝され、思考力・独創性などが注目される時代だ。しかし、今、自分は改めて「暗記」「体に叩き込む」ことの重要性を感じている。ユダヤ人や中国人の知識人は幼少期から「タルムード」や「四書五経」を体に叩き込む事で知的ケイパビリティを強化してきたと言う。また、なにより、知識を暗記していないと、生身のコミュニケーションで即興的な対応ができない。機械との競争の時代に、生身のコミュニケーションの価値は相対的に上がっていると思う。だから、デジタルな検索術は絶対に否定しないが、暗記の重要性は再考されるべきだろう。

 

下に抜粋したようなTIPSがとにかくこれでもか、と載っている。著者はサービス精神豊富な方だったのだなぁと感じる。

 

言葉には、意識のなかだけで発せられる「内言」と、口から音として出る「外言」とがあり、人間の精神の発達過程からみるなら、「外言」に頼っているのはまだ幼稚な証拠なのです。よく幼児が、ひとりごとを言いながら遊んでいるのを見かけることと思います。子どもたちは、頭で考えていることを、すぐに外へ出してしまいます。それを耳で聞きとって、その刺激を受けて行動するわけです。スイスの心理学者ジャン・ピアジェは、これを自己中心的言語と呼んでいますが、子どもは、こうして自分の世界を完結させ、生きているのです。  しかし成長するにつれて、「内言化」がすすみ、ものを考えるときに、声に出してぶつぶつ言うようなことはなくなります。頭のなかで、自由に言葉を駆使しつつ考えていけるようになり、精神世界が外へ向かって拡大していくわけです。  これを逆手にとって、記憶の際にも自分がまだ幼かったころに帰り、「外言」に頼ってみるのも、ときに大きな効果を発揮することがあります。たしかに「内言」は、意識のなかを滑らかに流れていきますが、それが逆に理解の妨げになることがあります。というのは、さきほど述べた私の体験のように、頭のなかでいくら繰返してもわからないのは、心にひっかかるものがないからです。ところが一度、「外言化」してしまうと、流れが変わり、ひっかかりができて、記憶に有利に働いてくるようになるのです。  英単語や文章暗記のときにも、「外言」は、「内言」とはまるで異なる「響き」をもっていますから、これがインパクトとなって記憶を強化していくというわけです。とはいっても、電車のなかのように、周囲に人がいて口に出しにくい場合もあることでしょう。このような場合には、口に出したつもりで、心のなかで本を読むように、言葉のひとつひとつを意識しながら、繰返し憶えるようにすると、同じような効果があります。要は、スムーズに流れやすい思考活動に、「ひっかかり」をつくって、記憶に定着させるように心がければよいのです