火星に住むつもりかい?/伊坂幸太郎

 

 

火星に住むつもりかい?

火星に住むつもりかい?

 

 

 
私はそれほど伊坂幸太郎の熱心な読者とは言えません。何冊かは読んでいるので著者の作風はなんとなく知っているというくらいのレベルですが、本作は前よりもちょっと暗くなったかな、と感じました。
 
とはいえ、序盤からテンポ感というか話の運びが巧みで(前から巧みだと思っていたけれど改めて)あり、著者独特のグルーヴ感もあり、あっという間に読み終わるくらいのパワフルな作品でした。映画化は決定でしょうね。
 
ちょっと「社会派」な内容でもありますが、そっち方面をあまり深く受け止めなくてもいいようにも思います。昨今の風潮から「国家主権を強調する政権への批判!」みたいに受け取る読者も居るのではないか、とも思いましたが、そういう話ではないでしょう。これはむしろ、体制や権力の暴走よりも、「翼賛する大衆」の方が怖いというお話です。
 
というか、本作のストーリー展開からは、伊坂幸太郎は日本の民衆とか大衆にほとんど絶望している、ということしか読み取れないのが、逆に怖い感じでもありました。*1
 
本作は書き下ろし、とのこと。本が売れない時代で、作家専業では食べていくことが難しい、とのニュースをしばしば聞きます。伊坂さんのような方が専業でやっていけるだけの環境は日本に残って欲しいなぁなどと思いました。
 
ちなみに、会社の後輩から借りての読書でした。

*1:著者も当然参考にしているであろう『ダークナイト』では、少し大衆に希望を見いだすような展開がありましたが、この小説には大衆への信頼はほとんど皆無・・・