[テレビ]カンブリア宮殿 カクヤスの社長

酒大好き&カクヤスのヘビーユーザーの自分はその点だけでも楽しみに見た。カクヤスはビール一本から無料配送で有名な酒屋。都内23区に百数十の店舗がある。すると、経営戦略的にも大変面白い内容だった。

MBAの世界では、ヤマト運輸の創業者、小倉昌男氏の「経営学」という名著が有名なのだが、その中の宅配便の着想のエッセンス(密度を高める)に類似した発想の話が、カクヤスが今のビジネスモデルを築き上げる過程であった。「商圏1.2KMの理論」「半径200m増えるだけで、配送員の移動距離は猛烈に増える」「個々の店の損益が問題なのではなく、全体がひとつの物流インフラ」といったビジネスシステムの話は大変に鋭い。ビジネスケーススタディが書ける題材だ。

それから、カクヤスの社長も非常にカジュアル(いつもラフな私服)で合理的な方のようで興味深かった。この二点では、ユニクロの柳井氏に通じるものがありそうだ。ただし、人情面では結構深くて、以下のような事を言っていたのが印象に残った。

  • 『カクヤスも成長して来て、大手の企業から優秀な人が中途で転職してくるようになった。その人達にいつも言う。あなた方から見れば、ウチの社員はガサツで仕事のレベルも高くないかもしれない。でも今の当社を支えているのは彼らです。彼らをリスペクトして欲しい。それが出来ないなら当社には来ないで下さい』

立派な言葉だと思った。

経営学研究者の皆さんの間で、究極の経営者本の一冊として有名。

小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

カンブリア宮殿の番組最後について

この番組のエンディングが村上龍が「総括エッセイ」を書いてそれをナレーターが朗読する、という体裁にここ最近変わったことは良かった。村上龍はやはり文章の人だと思う。深い余韻を持たせる文章を書いてくれる。そして、そのあとに謎のクイズコーナー(選択肢が異常にしょっぱい)があり、その余韻を台無しにしてくれるのはテレビ東京らしいご愛嬌なのか。