ビジネス・インサイト/石井淳蔵
- 作者: 石井淳蔵
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/04/21
- メディア: 新書
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昨年出た新書。去年一読済み。最近、ある場で引用したい一節があるのでこちらにもメモ。
本書のメインの筋とはあまり関係の無い部分だが、一読したときに非常に印象に残った部分。
石井先生(神戸大学MBAの重鎮)は、松下幸之助、本田宗一郎、中内功の共通点は、実業を起こした後に、(かなり多忙であったであろうにも関わらず)敢えて学校で勉強したことだ、と述べる。
トーヨサッシ創業者、潮田健次郎氏も日本経済新聞に連載された「私の履歴書」によると同様であるそうだ。そして、石井先生は、以下のように記述する。
彼(引用者注:潮田氏)のエッセイを読んで印象に残った点は、講義する先生たちの話が、つねに自身の経営の仕事の関連で理解され、ときによってはすぐに経営に活かされたことである。同じセミナーに大企業の役員・部長クラスの人も出席していたそうだが、そうした人たちは、「大学の先生は実務を知らないから、空理空論で役に立たない」と話していたという。潮田は逆に、「学者は経営を普遍的に話すから、私にとって応用が利きやすい」と感じたという。
強く印象に残った。結局、成長、特に大人の成長には、「受け手の感度」が決定的に大事だということなのだろう。
本書全体も、「論理実証主義」の限界を扱った骨太な内容で、新書ながらも、かなりの難易度であり、安易に論じることのできないくらい深い(やや衒学的な)内容。個人的には、石井先生の過去の傑作『マーケティングの神話』*1も好きだし、こういう内容は大好きだが…。万人向けでないことは確かでもある。
*1:学部生のころは、マーケティングのゼミに所属していたのでその頃読んで、理解できたかどうかは別として衝撃を受けた記憶は強い