シングルマン/トム・フォード監督


キューバ危機さなかのアメリカL.A.。ゲイで大学教授の中年主人公は、事故死したパートナーの想い出に浸り失意の日々を送る。ついには、自殺を決意し、最後の一日を過ごすが…。


というお話。映画館で見てきた。


なんといっても、有名デザイナー、トム・フォード*1が映画初監督ということが「売り」で、僕もその点に興味を惹かれて見に行った。一年くらい前にアメリカで公開されたものが、今ようやく日本で劇場公開、というタイミングらしい。


ストーリーは地味で起伏が無いながらも、映画に表現されている「美意識」は圧巻。昔、雑誌*2で、トム・フォードの自宅を見てそのセンスに畏れ入ったたことがある。おそらくトム・フォード自身を投影していると思われるこの映画の主人公の自宅も端正過ぎて怖いくらい。その端正さは、むしろ寂しさ、悲しさを表現していると思われる。ゲイであること、はあくまで舞台装置に過ぎず、「少数派であること」という普遍的な主題に昇華することに成功している映画だと思う。(一方で、ゲイが見ればゲイだけに分かるいろんな符牒が散りばめられてもいそうではある。)


ゲイ映画としては、かの有名な「ブロークバック・マウンテン*3」ほど描写がキツくないので、概ねの人は普通に見れると思う。余談ながらブロークバック・マウンテンは映画館に観に行って、大スクリーンであの映画を味わい尽くしてしまい、しばらくその余韻が抜けずに困った想い出がある。


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人事コンサル的には、最近「ダイバーシティ」論、流行りなわけですが、それを言うならLGBT問題も避けて通れない、だからこういう映画もたまには見ておくことが人事担当者には必要だと思う、と感じたりしました。短時間とか育休とかいうのは、ダイバーシティのほんの入口に過ぎないわけで。

*1:当然というか、この方もゲイですね

*2:CASA BRUTUSだったと思う

*3:アカデミー監督賞他3部門受賞。これは、凄い名作だと思うけれど、安易な推薦は控える、というタイプの作品