成長なき時代の「国家」を構想する/中野剛志編


成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン―

成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン―


専門家向けの本。


「あくまで成長・拡大をめざすべき」VS「成熟を前提として、それでも生きていける制度を構築すべき」という対立的な概念は、今日、重要な論点である。

自分の中では、基礎研究的な仕入れの読書と位置付けて読んでみた。


まだ全部は読んでいないけれど、序文にあった「日本は欧米への追いつけ追い越せを達成した。すでに成長を目標としない新たな価値観を提示するべきフェーズに来ている、という指摘は、70年代、80年代に既に政策の現場でさんざん行われていた。しかし、90年代にバブルが崩壊すると、それが無かったことのように新自由主義的な方向に触れた。そして今また、昔と同じような問題提起がされている。結局、日本人は、あまり深く考えていない」というレビューは面白かった。


成長なき時代には、成長時代の「GDP」に代わり「福利」という概念が重要*1になるという。福利は、原則的に定量化・指標化は出来ない、と論じられている。


あとは、萱野稔人氏の、ベーシックインカム論批判は、その根底にある姿勢など、勉強になった。


人事コンサルタントとしては「成長なき時代の人事管理」という論をまとめてみたいものだ。

*1:企業でいえば、給与や出世ではなくて、従業員満足度などが管理すべき尺度になるという風にも置き換えられる。もちろん、単に従業員満足度というのは単純に過ぎるだろう。世代別に指標を変えるなど色々な工夫が必要になりそうだ