文藝春秋2011年3月号 芥川賞受賞作掲載号
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/02/10
- メディア: 雑誌
- 購入: 1人 クリック: 146回
- この商品を含むブログ (36件) を見る
純文学読書も趣味の一つであるため、月刊文藝春秋の芥川賞受賞作掲載号はここ10年くらいほとんど買って受賞作を読んでいる。受賞作に加え、選評も楽しみにしている。
今回は例年の中でも一際話題の大きい、ダブル受賞。
「前科あり中卒」をキャラクターとしている西村氏
と
「文学の名門一族の若手美女」をキャラクターとしている朝吹氏
のお二人。
早速、両方の作品を読んだが、個人的には西村氏の『苦役列車』の方が面白く読めた。まあ、これは趣味の問題でしょう。
どちらの作品もタイプは違うものの文体が練られている。どちらかというと一見シンプルな『苦役列車』の文体の方が興味深い。文中でも「俺は中卒だから」とボヤきまくるわりに「ひょいとインチメートな感じを抱くと・・・」などの横文字の使い方が面白い。当たり前だけれど、単に激情的で乱暴な文章ではない。
それから、受賞には至らなかったものの、ノミネートされていた小谷野敦氏の『母子寮前』も各所で目に入って来る評判が興味深いので読んでみたいと思っている。
あと、選評方面の感想。石原慎太郎が、かなり久しぶりに真面目に書いていたような気がした。いつも作品と関係のない老人のボヤキを書きまくる選評が風物詩だったのに。その芸風を村上龍が引き継いでいくのかもしれない。村上龍氏は今回の二作について「技巧は認めるがメッセージが陳腐」と厳しいコメントを出していた。ちなみに、個人的に毎回、一番信頼して読んでいる選評は山田詠美のものです。
同誌には、他に、伊丹教授と稲森和夫氏の対談も出ていて、他に、松任谷由実についてのドキュメンタリーも面白く、お得な買い物だ思いました。