不都合な相手と話す技術/北川達夫

不都合な相手と話す技術 ―フィンランド式「対話力」入門

不都合な相手と話す技術 ―フィンランド式「対話力」入門



尊敬する北川先生の本。週刊東洋経済での連載をまとめたもの*1。前からこの本をここで紹介したかったが遅くなった。

「コミュニケーション」について書かれた名著だと思う。

北川先生のメッセージは一貫しており、本書内でも、他の著作との間にも、述べられている主張に重複があるけれど、とても大事なことが書かれている。

北川先生はかなり哲学の素養がおありなのだろうと読んでいて感じた。本書には殆ど全くといってよいほど、哲学者の名前などが出てこない。しかし、ハーバーマス構造主義哲学の偉人たちの知見を援用した上で、本書の主張は展開されていることは確実と思われる。(逆に、敢えてそういう専門家名を出さない、という著述方法に興味を惹かれる部分もある)

本書の内容は、組織・人材のグローバル化について考える際の必読書と言えると思うが、そういう目線で本書が潜在読者層から眺められているかどうかが気になるところ。人事部・人材開発部ほど必読、という本だと思います。



P43の内容の要約。

一人ひとりが現時点での(未熟かも知れない)レベルでも「価値判断をする」ことを否定・抑圧してはいけない。それは権威主義になる。一方で「学ばなければ到達できない価値のあるもの」が存在することと、そのことを「畏れる」こと、もまた同時に教えなければいけない。一見矛盾するようなこの二つのことが必要とされる。


P120の内容の要約。

コミュニケーショの対立要素は、「感情」・「理性」・「利益」の三つ。
「理性を優先することが善」と考えるのは危険。自分もこの三つに囚われていることを自覚し、この三者のバランスをとる。他者との対話の前にまず自分との対話。

あとp217の新幹線車内でのエピソードも面白かった。

*1:これは連載中から個人的に、書籍化を待ち詫びていた。ただ、もうちょっと編集の工夫というか、もっと売れる、間口が広がるような、書籍化の仕方が無かったのかなとの気持ちもあります。内容が広まって欲しいだけに。