ふしぎなキリスト教 橋爪大三郎/大澤真幸


ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)


なぜ、西洋が近代を生み出し世界を支配したのか?、という根本的な問いを扱った本。本書でもあるように、イスラム教の方が宗教としては合理的*1で、科学の分野でも長くキリスト教を凌駕していた。しかし、結局はキリスト教が世界をリードした。それはなぜか?


あくまでこういう問題を議論するためにキリスト教を題材としている、という印象の本であり「キリスト教を全く知らないのでその教義について正しく知りたい」という人に向いた本ではないように思う。


自分なりに勝手にまとめると、キリスト教発展の原動力は「世俗権力と宗教権力の分離」「もともとも持っていた教義に内在する曖昧さ、矛盾」「人間理性のへの崇拝に向かった」ということだろうか。

このあたりを論じた第三章は特に面白かった。ただし、予定説が資本主義を産むというロジックの解説に代表されるように、パラドキシカルな論理展開が多用されているので、橋爪先生のスラスラと語る論理展開についていくのは結構骨が折れる。




もちろん、冒頭に掲げた大きな問いに対して、この一冊だけで答えが出るはずもない。J・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄』など他の著者や宗教以外の側面も勉強する必要があるだろう。





追記:第三章に出ている宗教的観点からみた日本人論も面白い。日本人は神様に指図されるのが大嫌いな民族、とか、日本人がモノづくりに強い理由、とか。

*1:このあたりを「え、そうなの?うそでしょ」というレベルの初学者まで、この本は降りてきてくれてはいない。私も数年前までは、全く知りませんでしたが、今ではこの辺は基本事項として分かるようになりました