菊次郎の夏/北野武監督(1999)
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2007/10/26
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夏休みの出来事を描いたサマームービーであり、少年が成長するロードームービー。今の季節にぴったりの一本。男児を持つ父親の皆さんには特におすすめしたい。
この映画の登場人物は敢えてハッキリ言うと「バカで不器用・貧乏・親に恵まれない」人々(すなわち弱者)ばかり。世知辛い世の中で、既にスタートラインから敗北している人々ばかりが出てくる。
そして、北野監督のそうした弱者への共感・優しさが余す所なく表現*1されている作品である。
こういう世界観を文章でなく映画作品で語れるとは、北野武はやはり粋(イキ)である。
そうした監督の世界観を端的に示したシーンが、中盤のクライマックスシーンだ。
それは、子供が、子供には直面するのが酷(こく)すぎる「決定的な現実」を目の前にしてしまった瞬間に、横にいる大人が自分だけだった場合に、自分は大人としてどう振舞うか、という事を扱っている。
励ますか。笑って誤魔化すか。
そのシーンでは、北野武が、彼なりの一つの答えをしっかり描いている。
映画で表現されたそれは、決して器用なものではなかった。
というか、不器用過ぎた。
それだけに、見ていたこちらが泣けた。
そして「自分だったら、どうすっかな」と思ったりもした。
あと、この映画はクライマックス以降の後半が割とあることもポイント。この後半には、井出らっきょとか、グレート義太夫の出演シーンが多く、「後半が長い」という意見もあるようだが、監督はそんなこと考えぬいてこのバランスにしてるに決まってる。それが監督の考える「やさしさ」と関連しているのだと僕は解釈した。
北野監督の考える日本の美しい夏(とても昭和的*2な)の映像、と、久石譲の有名な主題曲も美しい。
盛夏を前に、オススメの一本。