学問のすすめ/福澤諭吉


学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)



最近、NHKで本書を取り上げる番組がやっていて、本も売れているらしいので読んでみた。


福澤諭吉って凄いなぁ、と素直に関心してしまう内容だ。江戸時代に育ちつつ、西欧近代のエッセンスを的確に掴み「日本も平等社会になったんだから、こういう風に考えていかないと、いけないよ」と啓蒙しているのが本書である。


福沢諭吉が明治の初めにここまで分かっていたことが、なぜ、今の日本で出来てないんだ!」(もっと言うと、慶応の塾生は何をしてたんだ!)と思ったりもするが、そこでいきり立っても仕方ない。西洋風には出来ない前提で戦略を立てる方に頭を使うべきだと思う。



福澤先生の有名な言葉といえば「独立自尊」がある。一箇所、素晴らしいところを引用しよう。


国の文明は形のあるもので評価してはならない。学校とか、工業とか、陸軍とか、海軍とかいうのも、これらはすべて文明の形である。これらの形を作るのは難しくはない。金をだせば買えるのだから。


ただ、ここに形のないものが一つある。


これは、目で見えない、耳に聞こえない、売り買いもできない、貸し借りもできない。しかし、国民の間にまんべんなく存在していて、その作用はたいへん強い。これがなければ、学校その他形あるものも、実際の役には立たない。真に「文明の精神」と呼ぶべき最も偉大で、最も重要なものなのだ。


では、そのものとは何なのだろうか?「人民独立の気概」である。


上記の「国」を、会社、とか、所属組織に当てはめて、再読すると、全く同じことが言えることに気付かされる。

「人民独立の気概」としては、西洋でいう「社会契約説」な概念が想定されていて、それを、明治維新を経た日本人に一生懸命教えようとしているのがこの本である。


ところで、今回読んだのは現代語訳がされているバージョンだったので、とても読みやすかった。ただし、僕は昔、福澤諭吉の自伝である『福翁自伝』の方は岩波文庫の原文で読んだことがあるけど、それはそれで凄く良かった。ご本人の息遣いが直接感じらる読書体験だった。ちょっと笑えるくらいサバサバしたオッサンという印象を受けた。原文もちょっとだけ頑張れば普通に読める日本語です。


それにしても、「国民に学問が無いと、その国の政府もダメなもんになるよ」と明治6年に主張してる福澤先生が今の状況を見たら、何と言うか。。。あと、福澤先生の「独立」論を読んでると、そもそも日米安保を問題にするだろうな・・・とか、色々、現代を考えるに良い本でもある。