果断 隠蔽捜査2/今野敏
- 作者: 今野敏
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/01/28
- メディア: 文庫
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シリーズの前作『隠蔽捜査』が面白かったので、文庫化されるのを待っていた。本作品は、山本周五郎賞と日本推理作家協会賞、ダブル受賞の作品だそうである。
この小説シリーズの特徴として、自分の仕事柄のせいか強く感じてしまう点は、警察のビュロクラシー(官僚機構)の緻密な描き方だ。キャリアとノンキャリ、キャリア間のツバぜりあい、階級、上意下達、権限といったものの描写に優れているので、そこに注目して読んでしまう。もちろん、民間企業も大概ビュロクラシーなのだが、それを「煮詰めた」姿が警察組織であり、だから読んでいて興味深く感じるのだろう。
合理性・使命感の権化として造型されている主人公は、この第2作では時に笑いも誘ってくれる。基本的には緊迫したサスペンスが続くので、実際にあっという間に読んでしまったのだが、「ここ笑うところだよな」というところが幾つかあった。
ところで、丁度本書を読んでいる合間に、偶然、霞ヶ関の警察庁の入居する某合同庁舎に訪れる機会があった(本書内で主人公も同じビルに呼び出される場面がある)ので、ちょっと興奮した。
組織論好きであれば、警察の組織機構には強く興味を引かれるはずだと思う。少し古いが、以下の書籍が面白い。別に組織論的探究心で読まなくても、この本を読んでおくと、佐々木譲とかの警察モノ小説が2倍くらい深く楽しめるというメリットがある。なお、「隠蔽捜査」シリーズは広く強くオススメできますが、こちらは「マニア向け」です、とお断りしておきます。