トヨタ「係長」20年ぶり復活

トヨタ「係長」20年ぶり復活 開発部門まず1000人
現場の束ね役担う 若手育成機能も 2010/6/11 6:33 情報元 日本経済新聞 電子版

 トヨタ自動車は「係長職」を約20年ぶりに復活させる。新車開発を担う技術開発部門の約1000人を係長級として一定の権限を持たせ、5人程度の部下の管理や指導を徹底させる。日本企業は組織のフラット化を進めてきたが、企業規模の急速な拡大や経営のグローバル化の進展などで現場の末端まで目が届かなくなっている。トヨタを皮切りに体制を見直す動きも広がりそうだ。

 トヨタの技術開発はボディー、内装、エンジンなど部品ごとに約80部門あり約1万5000人が所属。入社10年前後の社員を係長級として扱う。1年かけて定着具合を見極め、新たなポストとして導入する。正式呼称に「係長」を使うかどうかは未定だが給与面での処遇も検討する。係長級は現場を束ね、日常業務やスキル向上に一般社員が専念できる体制を整えるほか、教育係も兼ねる。

 トヨタは1989年に課・係制を廃止。現在は部、室、グループの3階層に区分している。各グループのスタッフは横並びだが、30人規模のグループもあるなど、課長級のリーダーが全員を管理することが難しかった。

 リーマン・ショック後の2009年3月期にトヨタは戦後初の営業赤字を計上したほか、大量リコール(回収・無償修理)を引き金に品質問題も浮上。社内でも「事業の急拡大に人材育成のスピードが追いつかなかった」との声が相次ぎ、働き方を含めた組織の見直しに着手している。

 日本企業は80年代後半から90年代、意思決定の迅速化や社内手続きの簡素化を目的に組織のフラット化を進めた。一方で若手社員がマネジメント経験を積む機会が減ったほか、00年代以降は人員削減もあって中間管理職が多忙となり、部下のケアが手薄になる問題も浮上している。

 係長の役職を復活させた企業は現時点でシャープなど一握りだが、組織形態や役割を見直す動きも増えそうだ。

今週は日銀のニュースに続いて、こちらも報じられた。両者の行動を単純に同じ流れと見るのは危険だが、「フラット化からの逆への動き」という点では共通。