オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える/木村元彦
- 作者: 木村元彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/05/20
- メディア: 文庫
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ワールドカップが開幕した。
サッカーに疎い自分だが、オシム監督の言葉は大好きだ。自分に限らず、日本人は外国人に説教されるのが、きらいではないらしく、最近、本屋に行くと無数のオシム本が並んでいて、どれを読んで良いのか迷う。そこで、自宅の本棚から昔読んで感動した一冊を持ってきて読み返した。もう6年くらい前の本だ。
そして、来るべき戦いにおける日本の勝利を願って、オシム語録を写経してみた。
改めて、本当に良いことを言う人だと思う。(今回、写経してみて、オシムさんの言ってることと、ビジネススクールの組織行動論で教えていることと、ほとんど同じということに驚いた)
本書は、語録だけではなくて、木村元彦氏の徹底した取材に基づくユーゴ史とオシム氏の関わりについての記述も厚く、その点でオススメできる一冊でもある。
P37
日本人は平均的な地位、中間に甘んじすぎるきらいがある。野心に欠ける。これは危険なメンタリティーだ。受身過ぎる。(精神的に)周囲に左右されることが多い。フットボールの世界ではもっと批判に強くならなければ。P38
言葉は極めて重要だ。そして銃器のように危険でもある。私は記者を観察している。(略)新聞記者は戦争を始めることができる。意図を持てば世の中を危険な方向に導けるのだから。ユーゴの戦争だってそこから始まった部分がある。P43
アイデアのない人間もサッカーはできるが、サッカー選手にはなれない。でもアイデアは練習だけでは身に付かない。鍛えられない。バルカン半島からテクニックに優れた選手が多く出たのは、生活の中でアイデアを見つける、答えを出していくとう環境に鍛えこまれたからだろう。更にいえば、ある選手がそういったアイデアを身につけているかどうかは、サッカーのプレーを見ていなくても普段からの言動を見ていれば予想できる。P182
DFは集中できずにピッチで寝るのなら、ホテルに帰って寝ていてくれ。それくらい集中して目を覚ましてやっていかないと今日の試合は難しい。我々は磐田まで遠足に来たわけではない。もし負けるようなことがっても、自分たちのできることをすることで我々のプレーを見せよう。やることをやってもし負けるなら、胸を張って帰れるはずだ。モチベーションを高める方法なんて何千通りもある。それぞれ、違うのだ。選手がモチベートされる要素としては、例えば誰からいいプレーをすることを強要され、怒鳴られてやっている人間もいるだろうし、時にはおカネを2倍払うからと言われてモチベーションを上げる人間もいるだろう。それはひとりひとり違うし、一概には言えない。ただ、大体、いいプレーをしたらおカネを2倍はらうよ、と言われた日にはロクなプレーはできない(笑)、そんなものだ。
私が実際にやっていることを話そうか。
試合の前には戦術の話はほとんどしない。モチベーションを上げるのに大事だと思っていることは、選手が自分たちで物事を考えようとするのを助けてやることだ。自分たちが何をやるか、どう戦うのかを考えやすくしてやる。
お前ら今日は絶対に勝たないとだめだぞ、そんなことは絶対に言わない。別に勝たなければならない試合なんてないんだ。お金云々じゃない。
でも、とにかくお客さんは少なくても来てくれる。まずは、自分たちのために、自分のやれることをやりきるということが大事だという話をする。
P194
攻めるかどうかというのは、人生の哲学とも関わっている。プロの世界だから結果は大事。内容が良いかどうかよりも、やはり勝ち負けが注目されるし、それがプロでもある。そういう意味で人生の哲学と関わってくるのではないか?P210
無数にあるシステムそれ自体を語ることに、いったいどんな意味があるというのか。大切なことは、まずどういう選手がいるか把握すること。個性を活かすシステムでなければ意味がない。システムが人間の上に君臨することは許されないのだ。
P214
とにかく毎日選手と会っているわけだから、毎日、選手から学んでいる。毎日学んでも完全に学ぶことは絶対にありえない。一人ひとり心理状態は違うし、環境も異なるからだ。(略)だって、私の仕事はスイカを売ることではなくて、そういう生きている人間と接しているわけだから。
仕事に置き換えて考えてしまいます。