池波正太郎直伝 男の心得/佐藤隆介

前にこのエントリで述べたように池波正太郎先生のファン*1なのだが、最近本屋で、以下の本を偶然見つけて買って読んだ。(今、池波先生の没後20年でフェアをやっていますね)


池波正太郎直伝 男の心得 (新潮文庫)

池波正太郎直伝 男の心得 (新潮文庫)


著者は池波正太郎の「弟子」の方。

そうしたら、これが凄く面白い。書かれているのは、いわゆる「独断と偏見」ばかりなのだけれど、読んで面白いのは「毒にも薬にもならないもの」よりも「独断と偏見」である、と再確認した。


特に、第一章 男を鍛える「食の流儀」 ウィスキー で述べられている著者の「ウィスキー論」は読みながら笑いが止まらない内容で、すぐにこの人のファンになった。

私のような人間にとっては、男がウィスキーなしで生きていられるというのはほとんど信じ難い。だから、つい、「ウィスキーを嗜まぬような男は、男とはいえない」などと暴言を吐いては、あちこちでひんしゅくを買っている。


(略)

一日の反省をすべきひとときにふさわしい酒がウィスキーの他にあるだろうか。ウィスキーはウィスキーさえあればいい。他になにもいらない。せいぜい冷たい水と氷だけ。それすら別段なければならないというものではない。グラスに琥珀色の液体を注ぎ、黙してすすりながら一日をふり返る。



あと、自分などが言うのもおこがましいが、この佐藤隆介氏の文章のリズム感、言葉の選び方が素晴らしく、名文愛好家の自分としてはその点でも嬉しい。繰り返し読んでこのリズム感を身につけたい。

*1:剣客商売」を中心に、あとは食と旅のエッセイを読んでいる程度のビギナーです