全集についている本作品の解題より

村上春樹全作品に収録された「風の歌を聴け」の著者本人による解題*1(ふりかえり)を一部ご紹介。この解題は短い文章ながら、この作品の成立、書いた後の周囲の反応などが記されている。この小説は最初は評判が良くなかったらしい。そして、村上春樹は以下のように書いている。

もっとも今となってみれば、たしかにこの作品には色々問題があると思う。というかその当時にあっても、ここにはいささかの問題があると僕自身思っていた。こんなものじゃない、ここには自分が書きたかったことの三分の一も書けてないじゃないかと僕は思った。この次はこれよりはもっとずっとうまく書ける、と。

村上春樹がこのデビュー作を突然思い立って書いたのが30才くらい。

この解題を書いたのが40代か50代だと思うけれど、実際に、彼が「もっとずっとうまく」書けるようになったことは皆が知っている。色々な文章やインタビューから、それは、才能によるものだけではなく、持続的努力と計画と意志の力によるものだということが分かる。専門家としての仕事やキャリアを考える上でスゴク良いロールモデルとなると思う。

*1:解題は全集を買った人ではないと知り得ないものですから