ビジネス書大バカ事典/勢古浩爾(三五館)


ビジネス書大バカ事典

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休日に訪れたとあるブックカフェの棚にこの本が並んでいたので、手にとったら、余りにも面白い。軽快な文体と鋭い批評眼に引き込まれ、注文したコーヒーを飲みながら殆ど全部読んでしまった。著者の方には「立ち読み」で申し訳ない。


著者は定年退職した年代くらいのご年配の方らしく、自分とは凄く年代が離れているのに、妙に波長が合い共振しまくりだった。著者の精神年齢が若いのか、それとも、自分が老成(あるいは、おっさん臭い)しているのか。いや、これは、精神「年齢」の問題ではなく「趣味」「感性」の問題なのだろう。(内田樹のファンであるという点は著者と私に共通しているようだ)

 著者は本書で以下のように言う。世の中、安易に「こうすれば成功できる」と主張する本(いわく、本物ではない「もどき」の本)が多すぎる。そんな本を書く著者も品性に欠けるし、買う人も情けない。「もどき」の本なぞ、いくら書いても、いくら読んでも、世の中は本当には変わらない。むしろ、本当の経営者の直接の語りを読むべきだ、と。

この著者の主張には殆ど同感。「我が意を得たり」「胸がすく」という感想が第一なのだが、この問題はそれほど単純に片付くものでもない

「もどき」の作家と、それに共感する読者は絶対に減らないと思う。これは今に始まったことでもないし、日本固有の減少でもない。それを批判するのはいつの時代もどこの国でも少数派。この少数派がエリート意識を持って「すねて」いても、実質的インパクトは無いのである。では、どうするのか?大変重い問題なのだ。(著者やたとえば私のような読書好き、考えること好きの人間はどちらかというと例外で)普通の人は、ムズカシイ話は聞きたくないものだ。さらに、「世の中の問題の大半は、とても複雑です。だから頭の良い人達が一生懸命考えても容易に解決しないからこそ問題として残っているのです」というような身も蓋もない現実の話を、敢えて金を出して本を買ってまで読みたいとは思わないのが現実だと自分は思う。それを非難してもあまり生産的でない。そこから先の議論をする必要がある。

帰宅して、アマゾンで調べたところ、著者は、もともとは出版社勤務のサラリーマンながら、他にも色々な本をお書きになっていて、今は「作家」の方であるらしい。大変、自分好みの論調の作家なのに、これまで自分は寡聞にして全く知らなかった。やはり、ブログとアマゾン中心の読書候補探索では見落としが出るようだ。こういう出会いをもたらしてくれるリアルな本屋をもっと回らなければいけないと思った。