希望のつくり方/玄田有史


希望のつくり方 (岩波新書)

希望のつくり方 (岩波新書)


人事管理、モチベーション論の分野でも「希望」「将来見通し」は大きなキーワードだ。

これらが無ければ、普通、人間は頑張れない。実際に、これらが低いと「離職率が高まる」というリサーチ結果も存在する。(例:高橋伸夫虚妄の成果主義」など)


そこで、本書を手にとって読んでみた。(東大の玄田先生が、「希望学」として取り組んだ学際的プロジェクトのひとつの集大成の本だ)



いろいろ研究を重ねた結果、

Hope is a Wish for Something to Come True by Action

と定義された、とのこと。



なんとも当たり前!ではないか。

少し具体的になって、そのことに意味はあると思うけれど。

ただ、何か、物足りなさが残る。

この物足りなさはあまり上手く説明できないけれど、これだけ大規模な研究をするなら、何らか制度的な提言をして欲しい、という想いがある。






更に専門家的に掘り下げてみる。



「会社の仕事」には「希望」とか「将来見通し」が必要だ、という考えは、一見当たり前に思える。



しかし、この考えを、「当たり前」と片付けてはいけない。


「会社の仕事」なんて所詮、お金の為だから、「希望」とか「将来見通し」など要らない、と考えるタイプの人も存在し得る。


イメージの世界だが、海外のブルーワーカーはそんな感じのヒトが多そうだし、日本にもそういうヒトも居る。(そういうヒトは、会社以外のことに価値を見出しているのだろう)


しかし、多くの「日本人」はあまりそのようなドライな考え方を持たない。


日本では、勤労・仕事に何らかの価値を見出しているヒトが多く、価値を見出しているからこそ、「希望」「将来見通し」を求めているのだ。

日本人が持つ、この「仕事」への熱い思い入れについては、希望学でも色々と検討がされたようである。

成熟時代の今、この「熱い思い」を少し冷まして、過剰な思い入れや「仕事で承認されたい」という気持ちを捨てて、仕事と付き合う必要がある、という考え方もある。しかしかし、これには反対意見もあるだろう。難しい問題だ。


この辺は、「近代個人」の問題とも併せていろいろ考察中です。