インサイド・ジョブ/世界不況の知られざる真実



ようやく大量の資料作成が少し一段落したので、休日にDVDにて視聴。前から観たいと思っていた。


アメリカを震源とする金融危機がなぜ起こったのか、を要人*1への取材を通じて浮き彫りにするドキュメンタリー。


映画としては地味なドキュメントなので、積極的関心が無いと、面白くは見れないと思う。自分は積極的関心があるので面白く見れた。


以下、思い切りネタバレというか、自分用にあらすじを記録したものです。


アメリカの金融業は、40年くらい前までは、大した産業ではなかった。中小企業が乱立し、メリルリンチの社員が「夜は車掌のバイトをしないと生計を立てられなかった」という話が紹介される。



その後、規制緩和と合併による巨大化で、金融界は肥大化し、政治に大きな影響を及ぼすこととなった。金融危機の前の10年で5000億の政治献金ロビイストは3000人、とその数、議員一人につき5人以上。これで自分たちに有利な法律を通し、規制強化を退ける。金融機関に法律を通した政治家が大手金融機関に天下るのが普通。



この規制緩和の流れに加担したとして、この作品で追求されるのが経済学者達だ。金融界の主張を支持する論文を、金融界からお金をもらって量産。アカデミッック界も規制緩和を後押ししたとされている。このくだりは、日本の「原子力村」を彷彿とさせる。「金融市場原理主義村」そのものである。


危機を強化した一つの原因は、金融機関の報酬制度。短期的成果に莫大な報酬を与える一方、中長期的な損失に対してのペナルティが無い。これは単にリスクテイクを助長するだけの報酬制度。




オバマ政権は規制強化を試みるが、結局、金融界の力は強く骨抜きにされている。「だって、アメリカは民主党政権でも共和党政権でもなく、「ウォール街政権だもん」という識者のコメントがあった。



この映画の最終盤に99%の庶民と1%の富裕層という話が出てくる。今、話題の「ウォール街占拠」のキャッチフレーズのネタ元の一つ(もちろん、この映画だけではないだろうけれど)である。


この作品にはマイケル・ムーア的なエキセントリックさは無く、思想的にはバランスの良いと思うが、この映画に欠けているとすれば、もう少し大局的な世界のグローバリゼーション、とそれに伴うアメリカの産業構造の変化に関する言及。この映画だけだと、ちょっと「金融業界の陰謀!」という印象が強いが、それだけで片付けられる問題でもないだろうと思う。製造業が当時の新興国に奪われて、金融強化しか道が無かったのよね、というあたりの解説があると良い。


グリーンスパンは上手く逃げっきたよな〜とか、何度か登場するアメリカの金融ロビイストはホント図々しいな、とかブツブツ言いながら楽しんで見た。

*1:ジョージ・ソロスとかストロスカーン(スキャンダル前)とかロゴフとかラジャンとか出てた