オリンピックの身代金/奥田英朗
- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/09/23
- メディア: 文庫
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奥田さんは、小人物の機微をユーモアを交えて描かさせたら日本一*1だと思う。しかし、本作ではその路線ではなく、シリアスでリアリティのある内容で攻めてきた。全体としてのストーリーに多少ご都合はあるけれど、一つ一つのディテールがとても濃い。(そのせいもあって、物語の尺が長大になった。)
結末が近づくにつれて、「この主人公、最後、どうなっちゃうのかな」という思いがどんどん大きくなるのだが、その始末のつけ方が、奥田さんらしかった。
文庫版解説の川本三郎氏は、吉田修一『悪人』と本作を照らしあわせていたが、個人的には『レディー・ジョーカー』を思い出した。忘れ去られようとしている貧困の亡霊的なものが、巨大権力に挑戦する、というプロットや渇いた感じのストーリーが似ている。
*1:Dr伊良部シリーズなど