ファミリー・ツリー/アレクサンダー・ペイン監督



サイドウェイ」「アバウト・シュミット」のアレクサンダー・ペイン監督がジョージ・クルーニーを主演に迎え、ハワイで暮らすある家族に起こる出来事を描いたドラマ。祖先の土地を受け継ぎ、ハワイで妻と2人の娘とともに暮らすマット・キングだが、ある日、妻のエリザベスがボートの事故でこん睡状態に陥ってしまう。さらに、エリザベスには不倫の相手がおり、離婚まで考えていたことが発覚。友人や長女もその事実を知っていたことにがく然としたマットは、自らの人生を見つめ直すことになる。第84回アカデミー賞で脚色賞を受賞。


「人間、裏表もあるし、複雑な存在だよね」ということを、派手さを抑えた品のある演出で描いた作品。傑作というよりも、「佳作」「良作」という言葉が当てはまる印象。




とにかく監督の演出の手腕が絶妙で素晴らしい。


「もっと派手にする方法もあるんだろうな」と思った場面が幾つかあったが、この監督はそこを派手にせず余白を残す。

だから見る側が心の中で考えることが要求される。

考えることができる「大人」向けの作品であると思った。





以下、このブログ恒例!?の、宗教的視点からの勝手解釈を少しばかり。(思い切りネタバレします)





この映画では、冒頭からずっと昏睡状態の奥さんが、一神教のGODに該当する。

旧約聖書にあきらかなように、GODは勝手である。時に人間には理解不能な残酷なこともする。人間はGODの周りをオロオロするだけ。そしてGODは人間の問いになど答えてくれない。これは、まさにこの映画における「奥さん」である。

中盤から「奥さん=GOD」的な暗喩かなと思って、見ていたら、最後、人間がGOD(奥さん)に「それでも私はあなたを信じます」という信仰告白のシーンがあって、「やっぱり、キリスト教文化圏だな〜」と思った。考え過ぎでしょうか。





現在映画館で公開中。予想通りというべきか、この品の良さというか「地味さ」が災いしてか、あまり日本ではヒットしてない模様。ジョージ・クルーニーアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたり、海の向こうではそれなりに評価が高いのだが。映画館の客席周りはジョージ・クルーニー目当ての女性客が中心だった。