MEDIA MAKERS 社会が動く「影響力」の正体/ 田端信太郎


MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体



自分と同世代の論客の出版デビュー作、ネット上のでのレピュテーションの高さに引かれて購入した。

必ずしもネットメディアだけについて書かれた本ではない。本書のパースペクティブは包括的に「メディア」全般を捉えている。しかし、ネットメディアの現状をある程度知っている人の方がより一層読んで楽しめると思う。

本書の白眉は、あらゆるメディア・コンテンツを分類する三次元マトリクスだろう。「ストック⇔フロー」「参加性⇔権威性」「リニア⇔ノンリニア」という三つの軸を著者は提示する。この軸は確かに分かりやすく普遍性がある。

僕自身、ネットの情報にどっぷりつかるにつれてそれまで興味の薄かった映画鑑賞に熱心になった(5年くらい前)、という経験を持っているのだが、その理由を本書を読んでこう考えた。

ネットは、著者の指摘する通り「ノンリニア」の情報提示である。それにどっぷりつかってしまった反作用として、対極である究極の時間軸リニアの情報である映画に吸い寄せられたということなのだろう、と。

また、第7章も良かった。「“コンテンツこそが大事で、メディアは伝える媒体に過ぎない”という意見は一面的に過ぎ、メディア特性がコンテンツをも変えてしまう」という事実を、CDとJ−POPの例で提示している。だからこそ、コンテンツを作る段階から、メディアを意識しなければならない、という著者の主張でありそれはその通りだと思う。


メディア関係者のみならず、「顧客にメッセージを発する」という行為から逃れられないビジネスパーソンで、今ものを考えなければならない立場にある人におすすめしたい。