ザ・マスター/ポール・トーマス・アンダーソン監督(2012)


監督: ポール・トーマス・アンダーソン - 出演者: ケヴィン・J・オコナー, クリストファー・エヴァン・ウェルチ, ジェシー・プレモンス, ラミ・マレク, エイミー・アダムス, ローラ・ダーン, アンビル・チルダース, フィリップ・シーモア・ホフマン, ホアキン・フェニックス
アカデミー賞主演男優賞などに輝いた怪作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソン監督が、新興宗教の裏側に迫った人間ドラマ。主演は本格的な俳優復帰となるホアキン・フェニックスで、狂気を宿らせた熱演が圧巻。教祖役のフィリップ・シーモア・ホフマンエイミー・アダムスら、実力派ぞろいの演技対決も見逃せない。

現在、日本で公開中。公開から間もないタイミングで見ることできた。

この監督(ポール・トーマス・アンダーソン、通称PTAというと通っぽい)は、玄人筋からの評判が極めて高い。(この映画の宣伝戦略もそれを活かして同業からのこのコメントを集めているが、これは良い。これ読んだら見に行かざるをえない。)

個人的にも、前作「ゼア・ウィルビー・ブラッド」が大傑作だと思うので、新作には期待感を持って行った。

新興宗教のサイエントロジーが舞台という情報にも個人的には興味を掻き立てられた。

さて、見終わって…。(ネタバレ的なものあり)









この監督が天才だ、という事への疑いはない。ただし、面白い映画か、人に勧められるか、というと微妙。安易には勧められない。監督はこの作品で、人間関係や魂の孤独、というものを描こうとしている、とは感じた。ただしその結果、そこには分かりやすいカタルシスもないし、そもそも言葉で表現できるような簡単なものはない。いわんや、エンターテイメント性も無い。さすがの監督もちょっと、映画的に説明不足だと感じたのだろうか。こんなメーセージを残してくれては居る。これをヒントに、見終わったあと、色々悶々と考えさせられる映画ではあった。




基本的な登場人物対置をしてみると、


マスター:雄弁家・集金・成り上がり・裏で女に操られている・表向きには迷いを見せない。表向き宗教的救済をアピールしているが国家に対しての貢献はない

フレディ:朴訥・貧困・不器用・女好き・見るからに不安定で迷いまくるブレまくる・国家のために軍人として戦い自らも傷を負った

とこの二人は見事に対照的な存在となっている。



ただし、どちらも「強烈な私欲」に動かされているという点では共通。まあ、これだけで見事に現実社会をカリカチュアしているとは言える。こうした二人がどういう関係を結ぶのか、どちらが本当の意味で「自由」なのか、というのがこの監督が描いたことかな、と思った。こんな作品を、資金難とか宗教団体からの抗議とかを跳ね除けて、自作のオリジナル脚本で監督しちゃうPTA監督はやっぱり鬼才・天才ということで間違いはない。


おまけ:マスターの息子の役に、マスター(フィリップ・シーモア・ホフマン)の若いころそっくりの人を当てているのは爆笑すべきエンターテイメント的ポイントだったのだろうか。(この息子が映画の中でもう少し動くのかな、と思ったのだけど…そういう分かりやすいことはしないPTA監督なのであった)


おまけ2:この映画、色々話題には事欠かない。いい話?の記事2つ。特に上の方の記事、一人の富豪が監督に惚れ込んで制作費をドンと出したとか、凄いな。下の方は、ハリウッドゴシップとして…。

http://ro69.jp/blog/nakamura/77563

http://www.cinematoday.jp/page/N0045639