パイの物語/ヤン・マーテル

パイの物語

パイの物語


映画「ライフ・オブ・パイ」にかなり衝撃を受けたので、ブッカー賞受賞という原作本にも手を伸ばす。

アン・リー監督が、原作を、とても忠実に、上手に映画化していることが分かった。改めて監督を尊敬する。

原作を読んだから新たに分かることや、大幅に割愛されていたというような部分は殆ど無い。

更に言えば、小説して読みやすいとかページターナーではない。映画を観ていなければ途中で投げ出していた可能性もある。

ただし、この小説の主題、すなわち、人は何によって救済されるのか、人間にとって神とは何か、物語とは何か、という問いかけに対しては(小説というフォーマットだけに)具体的に文章で問題提起されている箇所が多い。やはりこの原作小説は素晴らしいのだと思う。

(序章より)

われわれ市民が芸術家を支えなければ、粗雑な現実の前に想像力を捨て去ることになり、われわれは何も信じず、取るに足らない夢だけを追うことになってしまうだろう。

まさに、一介の勤め人に過ぎない自分が、業務に直接の関係のない本や映画を大事にし、応援している理由に他ならない。