ドライブ・マイ・カー/村上春樹


月刊文藝春秋12月号に、書き下ろし短編が掲載されたので読む。

量的には短いものの、凝縮された硬質な感じで「この人、小説の職人だな」とビンビン感じる作品だった。テーマ的には「他者の理解(への諦念)」「暴力的物事の受け止め方」というとてもベーシックで、村上春樹的なもので、敢えて言えば目新しさはない。それでも、ここまで緻密で、かつ劇的な構成でじっくり読ませるこの文章力、文体力は凄い、と素直に思う。

そもそも、今年出た単行本、「多崎つくる」は騒がれ過ぎであった。あの騒ぎは本人が意図しているのかどうか分からないが、明らかに、「内容明かさず、突然出す」というマーケティングによるところが大きい。

「ドライブ・マイ・カー」のような地味な短編を味わえるファンだけが村上春樹を讃えれば良い、と思った。
(と、いう選民思想。ファンなので許してほしい)