人事部は見ている。/楠木新

人事部は見ている。 (日経プレミアシリーズ)

人事部は見ている。 (日経プレミアシリーズ)

売れているらしい。
仕事柄、「読んでおかなければいけないかな」と思い半ば義務感的に読んだが、とても良かった。
タイトルも良いし、「売れる本というのは売れるべくして売れるんだな〜」と思う。



人事部経験者が書いた本というと、「暴露本」「告発本」のようなものも少なくないし、あるいは「綺麗な話が中心の営業本」もある。本書はそのどちらでもない。真摯さが感じられる一冊。アマゾンの評価はもうちょっと高くても良いと思う。

映画「マイレージ・マイライフ」とか、岩井克人「会社はこれからどうなるのか?」など、僕が個人的に好きな作品が、随所に引用されているのも嬉しかった。畏れながら「やっぱ良いよね〜」と思いながら読んだ。

以下は面白いと思ったところをメモ。

人間は自分のことを3割高く評価しているもの。自分も含めて。これに関する島田紳助の名言「(ライバルの誰かに)ちょっと負けているなぁと思った時は、だいぶ負けている」が良い。


一般論として人事部員は社員情報に通じているべき、とされるが、個人の非公式な情報まで集める努力をすべきかどうか、人事部員は悩んでいる。著者は「公式な情報に限るべき」との信念をもっているそうだ。

「多くの人事担当者は、各社員との関係においてどういうポジションを取り、どのように情報収集すべきなのか常に悩んでいる」



人事部長は「昇格の履歴を見ただけで、知らない人物の的確な人物評を行うことができる」



日本企業流のチームでの仕事、米国企業流の個人での仕事、どちらが優れているのかという二者択一的な発想は貧しい。


中小企業のトップ層人事は「忠誠心」。大企業のトップ層人事は「本人だけでなく、派閥グループ単位での役職員」も加味して決まる。



かつて社内調整においてよく聞かれるフレーズを私なりに整理したことがある。
「(役員上司の誰某に)きちんと説明したか」「(役員上司の誰某は)どう言っている?」「(そんな話が進んでいることを)オレは聞いていない」