愚民社会/大塚英志・宮台真司
- 作者: 大塚英志,宮台真司
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2011/12/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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震災後、日本の「近代」について、とても挑発的に語られた対談本。
少し前に読んで、この本で話されていることはとても重要なことが含まれていると感じた。これを題材に何か書きたい(たとえば、大阪の橋下氏現象)と思っていたのだが、私の乏しい筆力では難しそうなので、一部を抜粋して紹介することにした。(太字は引用する際につけたものです)
P33
大塚
だから震災以降、いろいろな事に対して、ああ「土人」なんだ、この国の住人は、そう思うと全てが氷解する。宮台さんは「田吾作」というけれど、やさしすぎる。「土人」なんです、この国は。「天皇」の言説で歴史を区分し得るというのも土人ですね。「改元」でちゃらになってまたやり直すって、つまり「歴史」という近代的な時間軸が作れないってことでしょう。「時間はただ循環するだけでリセットを繰り変えす」というのは思考回路が近代以前にあるということでしかない。むろん、「土人」というのは差別用語ですが、ここでは「日本人」たちが「近代」を忌避し、思考停止の中で生きている状態をそれこそ差別的に指します。
p37
大塚
例えばこの地震のどさくさで「日本」を「復興」したければ、今こそ「憲法をどう作り直すのか」という機運が出てこないとおかしい。「『憲法』でまず国や社会のデザインをやらないとね」とは誰も言わない。そのこと一つとっても、いまだ憲法一つつくれない「土人」じゃないか。ということです。
(略)
「国難」「国のかたち」と口走りたがるくせに憲法をどうするかということにはならない。「なでしこジャパン」に乗って、とりあえず「日本」があることにする。それをやっていたらこの国は永遠に「近代」は迎えられない。それが「日本人」の選択だったらそうすりゃいい。
P51
大塚
明治の知識人たちが夢見た「努力目標としての近代」はまったく成立しなかったし、成立させようという努力そのものを戦後一貫して欠いているわけです。これだけサボタージュしていたら、もう無理ですよ。もう一回戦争が起きるとか、一度中国の領土になるとか、そうしたことが無い限りリセットできない、と言いたいところだけど、戦争に負けてアメリカに占領されてもダメだったんだから、やっぱり無理ですね。やる気ないんだもの。近代を通じてずっとサボタージュしていた国に何ができるのかっていうことです。と、すればたかだが「あんな地震くらいで」(と敢えて言いますが)この国の近代がリセットできると思ったら大間違いですよ。
P54
宮台
全体をよく見ないで旦那にぶら下がっているだけの土人。それがわれわれの自画像です。土人が営む民主主義はどの旦那がマシか、旦那にお灸をすえなくて良いか、といった旦那人気投票に過ぎません。旦那にそれなりの人材やリソースが集中しづつける時代は良かったけど、今は旦那にバカしかいないのに、まだ旦那人気投票を続けているというわけです。
課題は土人としての自画像を獲得した後の処方箋です。三つ考えています。
(以下は要訳)
第一案:エリート主義。土人たちに近代人になれといっても無理。エリートだけでも近代人に。三島由紀夫や江藤淳の発想。
第二案:共同体自治。土人の集まりである日本全体をどうこうするのはもう無理なので地域ごとにやれるところから。
第三案:教育と表現を通じた地道な改革。ただし、一神教じゃない日本人は「快適」と「幸福」を区別できなから、難しいですよ。
と、いった過激過ぎる「罵詈雑言」が200ページ近く続く。
なお、お二人はお二人なりの実践により、「文句を垂れているだけではなく」この状況に働きかけていこうという努力はされているとのこと。
上記抜粋で興味を持たれた方はぜひご一読を。
この危ない2人は何を話してるのか分からん、という方は近づかないことです。