映画を見ると得をする/池波正太郎

映画を見ると得をする

映画を見ると得をする


敬愛する池波正太郎が、タイトルの通り、映画の魅力について語った本。まとまりは無く、なんというか、池波版映画駄話(だばなし)のような趣もあるが、一流の時代小説作家だけあり、創作家の立場からの目線での解説は鋭い。

なにより、人間勉強、人生勉強としての映画鑑賞の効能を語った第三部はとても熱い。僕も30過ぎてから映画鑑賞に熱を入れだしたのだが、池波先生のこの考え方にも大いに影響されている。

物事を考える、企画するというような仕事にたずさわっている人間は、そんなことをしてたら駄目だよ。くだらん打ち合わせにダラダラと時間をつぶすなんて本当にもったいないと思うんだ。その間に良い映画を一本観る方がどれだけためになるかわからない。

映画を観るというのは、何も特別に勉強しようと思って観に行くのじゃないでしょう。娯楽なんだからね。僕だって娯楽として映画を観ているわけだよ。その娯楽が、結果的に、自分の知らないさまざまの人生を知るということにつながって行く。それが映画の素晴らしいところだと思うんだな。

これは映画ばかりじゃなくて、小説を読んでもそうなんだけれども、無意識のうちに、いろいろな事をもっと知りたいと、好奇心にあふれている人が一番得をする。

こうして印象に残ったところを並べて観ると、如何に自分が池波先生から影響を受けているかを再確認できる。